普段、社長さんを訪問する時、盛り上がりやすい話題は新しい情報や具体的なノウハウの話です。具体的なサービス、成功事例等も喜ばれます。
抽象概念よりも具体的な手段で、かつ相手が知らないことをお伝えできると大体喜ばれます。
私はそれに加えて具体的な数字(売上、利益率、採用人数、離職率等)を入れることを意識しています。大体の経営者は数字の話が好きだからです。
世の営業担当者さん達も訪問する際に社長さんに興味を持ってもらえるような具体的なネタを仕込んでは営業訪問するきっかけとしている人が多いはずです。
なので営業活動が具体的なツールやノウハウの提案になるのは実に自然な流れなのでしょう。
とはいえ、何かを成し遂げようとする強い思いがある社長さんを相手にする時や、驚くほど高い目標を掲げている相手の場合、具体的なサービスをたくさん揃えることで課題を解決するお手伝いをすることには限界があるようです。
それは、一つ一つ取り組むだけでは、とても達成できないほど目的意識と目標値が高いからです。
まだ見ぬ高みを目指すためには
目指す頂きが高ければ高いほど、具体的に「何」を「どうやって」するか?を議論する前に、そもそも論にまで一旦戻って「なぜ」「なんのために」そこを目指すのか?を整理することが大切だと思っています。
そして「なぜ」「なんのため」を誰にも誤解されない形に整形したら、多くの人に見てもらえる所に置いておく必要があります。
さらに、必要な人には必要な時にこちらから「なぜ」を届けていくことが大切だと思います。気づいてもらうのを待つのではなく。
情報を届ける具体的な相手とは、社員とその家族、お客様、協力業者、求職者、とそれらの見込み層を想定するといいと思います。
会社にとっての「なぜ」とは?
ちなみに、整形しておきたい「なぜ」は以下のとおりだと思っています。
1.なぜ、そもそもこの会社が存在しなければいけないのか(なぜ会社を作ったのか)?
2.今後どの方向へ進んでいこうと強く思っているのか?
3.普段から会社として大切にしている判断基準と行動基準は何なのか?
この辺を整理して、関係者へ分かりやすく伝えることをやりきると、会社として目指している業績目標をさらに一段も二段も上げることができるようになると思っています。
ひいては、社員一人ひとりが自主的に「目指したい!」と切望するそれぞれの目標値(目線)を今より数段あげることにも繋がるのだろうと。
とはいえ、「ビジョン等を整理したところで売上があがることはないだろ!」との言葉を今なお多くいただきます。
確かに、情報を整えて伝えきったところで、即売上アップにつながることは稀です。
この取り組みの効果を実感するまでには多少の時間がかかるので、なおさら早く取り組むことをオススメしたいです。
お金よりも思いが大切
ここで、どうしても成し遂げたい目的を実現するには、具体的なお金やサービスよりも強い思い「なぜ」が不可欠だということを知るにふさわしい事例をご紹介します。
町中で人道支援の募金活動をする人達を見たことがあると思います。
数名で募金箱を手にして「募金にご協力よろしくお願いします!」と熱心に活動していらっしゃる人達です。
では、彼女ら彼らが街頭に立ち続けるのは「なんのため」だと思いますか?
募金額100万円を達成するためでしょうか?
おそらくそうではないと思います。
100万円を集めるのであれば、100万円くらいならポンと出してくれるお金持ちに思いを訴えたほうが話は速いはずです。
彼女ら彼らにとっての「なぜ」はお金を集めることではないと思っています。
募金活動を通じて、一人でも多くの問題を知らない人達に自分達と同じように課題意識をもってもらうこと。
そして、知ってもらうだけでなく、自分にできる小さなアクションをおこしてしてもらうこと。
それにより、問題解決の機運を高めることが目的のはずなのです。
そこで、その具体的なアクションのひとつとして「募金をする」という手軽な手段を用意しているのだと思います。
極端な言い方ですが、お金を一切募金してくれなくてもいいとすら思っているはずです。
それより、活動に共感してもらい、その結果として自主的に別の場所で募金活動をしてくれたり、SNSで情報拡散の活動をしてくれたり、自ら動画制作をしてくれるのであれば、募金をしてくれるよりも嬉しいはずなのです。
お金はあくまでひとつの手段。
それよりも、知って、共感して、具体的にアクションを起こしてもらうことが活動をする「なぜ」なのだと思うのです。
自分達だけで募金活動をするよりも、仲間が増えたほうが影響力も認知度も機運もあがるので、ひいてはお金も集まりやすくなるのは想像できることなので。
経営も街頭募金と仕組みは一緒
これは会社経営にも全く同じことが言えると思っています。
会社の売上はあくまで日頃の活動プロセスの結果です。目的ではないはずなのです。
目的を誰の目から見ても分かりやすく整理し伝えていくことで、それに共感して一緒に活動してくれる人(社員や取引業者)が集まり、活動の機会を自ら広げてくれることになります。
お金を払ってくれる(モノを買ってくれる)ことよりも、共感して仲間となって一緒に活動に加わってくれることが何より嬉しいことです。
長期で見れば、一番売上に貢献してくれるのが仲間の存在だからです。
一緒に活動してくれる人以外でも、SNSで情報を拡散してくれたり、仲間を紹介してくれたりする人は、同じようにお金を払ってくれる人より大切です。
会社の「なぜ」を誤解のないように解りやすく整えれば、共感してくれる人が増えて、結果的に目的の実現に近づくことになります。
この好循環を生み出し、好循環を磨き続けることこそが経営者の仕事なのだと思います。
twitterで街頭募金のツイートを読んで、あらためてそう思ったので文章に残してみました。
最後までお読み頂き誠にありがとうございました。
Comments