最近は本を通販で買うことが多くなりました。行きつけの図書館で借り、手元に持っておきたいと思った本をポチッとするのです。
もともと本とECは相性が良かったようです。今では本屋や図書館に行った際に、探している本が見つからないと、店舗内の端末で本を探すのが日常になっているくらいです。
効率を考えるとウロウロ探すよりも端末をたたくほうが早いことは、ECで本を買わない人でもその便利さを体験済みなのです。
そんな中、急遽文房具が必要だったのと、気になる新刊をチェックしたいこともあり、滅多に行かない本屋さんへ行ってきました。
今回はその時の気づきをご紹介します。
店員さんはなんのために書店で働いているのか
書店では早速2冊を手に取りレジへ支払いに行きました。
ブックカバーをお願いしたのですが、そのお店では以前からブックカバーの折りたたみはセルフサービスになっていていました。
支払いが終わり、隣にあるブックカバーを折りたたむ机へ移動しました。
そのブックカバーの折り作業用の机には、店員さんが使い途中らしきノートPCとメモとボールペンが散らかっていました。
ブックカバーをつけた経験がある人なら分かるはずです。本のサイズに合わせて折りたたんで装着するのは素人にはちょっとしたコツがいるものです。一枚の紙を立体的な本のサイズに合わせて折る必要があるからです。
机の上の散らかったモノをオロオロと片付けて、おじさんが悪戦苦闘して2冊分のブックカバーを仕上げるのに軽く5分以上はかかりました。
その間、レジに立つ女性の店員さんは何をしていたと思いますか。
女性はレジの前に立ったままで何の作業もしていません。残念ながら、商品をレジに持ってくる客はいなかったのです。
ちなみに、私が作業をした机はレジのすぐ隣。約3m離れた所がブックカバーの作業場として用意されていて、片付けてよいものかとキョロキョロしながら作業をしていました。
なんとか2冊分できあがり、レジの前をとおって「ありがとうございました!」と声をかけ、会釈をして外へ出たのですが、その間女性の店員さんからは一言の返事も会釈もありませんでした。立ったままでした。
彼女は見た目で60歳前後。常識がないのも仕方ないと言い訳できる年齢ではありません。
これが地元の書店で起きた出来事の一部始終です。
「時代が変わったから」は言い訳
その時、直感しました。
書店が次々と閉店し、地域から書店が消えることが社会問題化しているとメディアが騒いでいるものの、その背景は時代の変化ばかりが原因ではないと。
書店から客が減ったのは書店経営側に要因があるのだと直感しました。
本をお店で買うという「書店ならではの良さ」をお客様に楽しんでもらうどころか、大切な客を自ら遠ざけているのですから。
これをメディアは「書店業界が」と大きな主語で語るのですが、先程の話のように決して業界全体の話ではなく、それぞれの経営姿勢と創意工夫の足りなさが大きな要因のひとつなのです。
実際に、夫婦で営む小型書店で経営が上手くいっているお店が地域にはありますので。
書店それぞれの経営の姿勢と取り組みには大きな違いがあり、地域市場の中に繁盛している店舗がある一方で、お客様に喜ばれる運営ができていない店舗もあるだけなのです。
書店は言うまでもなく商売をしているので、お客様に買ってもらい売上をあげることができなければ利益を確保できずに閉店する運命にあります。
だからこそ、会社の知恵と労力の全てをいかにお客様に喜んでもらうかに集中する必要があるのです。実にシンプルなお話です。
業界のおかれる環境や、人手不足等の店舗側の都合をいくら主張しても的はずれなのです。
環境は誰もに共通です。どの商売も繁盛している所は工夫と努力をしています。 与えられた条件下でいかにお客様のために価値を作り続けるかに注力すれば良いのです。
*的はずれな店舗側の主張例
私達(店員)は誰より本が好きである
私達は本を読むことがすばらしいことであると知っている
私達こだわりの本がたくさん揃っている
私達はオススメの本について熱く語れる
私達は読書量が誰より多い
商売である以上、関心をもつべきは「お客様」です。お客様のニーズの追求です。
これは、いつの時代も、どこの国でも、あらゆる商売で共通する商売繁盛の科学的な公式です。
自分たちが売りたい商品に興味を持つのは悪いことではないですが、何より優先して第一に考えるべきは「お客様」です。お客様に喜んでもらうことです。
書店のライバルは?
お客様に喜んでもらえなければ、いかに良い本が並んでいても、わざわざお店に足を運んでまで買ってもらえることはありません。
本の品揃え、専門性、レビューの多さではECにかないませんので。
書店には書店独自の価値があります。本好きにとって何にも代えがたいワクワクする魅力があります。
見たことがない多くの新刊が並んでいる陳列を見るだけでワクワクします。思いもよらぬ新たな発見も楽しい体験です。
ただし、それだけではわざわざ足を運んで買ってくれるほど商売は甘くはないのです。
商売は常に何かと顧客を奪い合い、競争の中で競っているからです。
スマホの登場により、15年前に比べて私達一人ひとりの可処分時間が著しく減っています。
やるべきことが増えたことで、それに合わせてあらゆることに費やす時間が従来と比べて限られているのです。
SNSをしたり動画を見たりTV電話をしたりと。行動の選択肢は増え続けているのです。
その結果、全ての行動に効率が求められるようになりました。
このような中で、不愉快な接客をされた後で、書店に足を運ぼうとは思わないのは自然なことです。そこでしか買えない品がないことを私達は知っているのです。
こうして、今まで本屋に足を運んでいた人も、苦手な店員さんがいるお店には顔を出さなくなります。今までECで本を買っていなかった人も、店員さんと接するのが苦痛であればECで買うことを試します。
こうして書店は自ら大切なお客様を遠ざけてきたのです。環境の変化だけが主要因ではありません。
「ウチの社員は接客よりも本を読むのが好きな人ばかりなので」。経営者のぼやきが聞こえそうですね。
社員の採用と社員の育成(人事)は言うまでもなく経営の最も重要な部分です。
ここを強化できなければ経営が改善されないのは書店だけに限った話ではありません。
このように、街の店舗経営と言えども、繁盛するか閉店に追い込まれるかは経営者の手腕によるのです。
では、書店経営にとっての生命線は何でしょうか?
本の品揃えですか?
店舗の大きさですか?
週末の集客イベントですか?
本の陳列と手作りポップですか?
お客様目線に立った接客ですか?
店舗が繁盛するかは、何を最優先と捉えて店を運営するかで決まるのです。
そして、その方針をブレずに貫き続けることが必要なのです。
言うまでもなく、これは本屋さんに限ったことではありません。
繁盛するには普遍的な商売の公式が大切なのです。
みなさんは、日頃からなんのために仕事をしているか語り合っていますか?
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
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