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執筆者の写真ナカジマ

日米の就業規則の違いがかなり深い

更新日:4月3日


新入社員が入社する4月は就業規則に目を通す機会も多い季節です。

今回は、いわゆる就業規則についてのお話なのですが、日本とアメリカとでは就業規則の文面が全く違っているのをご存知でしょうか。 そして、このちょっとした表現の違いには、思いのほか深い意味があり、その背景にも目を向けると実に多くのことを語ってくれます。


25年前イスラエル赴任時に、現地職員の就業規則(当時は服務要綱だったが)を改定することになりました。その際、アメリカ大使館の就業規則を参考にして作ってみてはどうかとの上司の助言で入手してみました。

どうやって入手したかは言えませんが(笑)





そして、驚いたのはその内容です。

ざっと目を通した瞬間、頭をハンマーで殴られるほどの衝撃が走りました。

「あれ???...そんな馬鹿な!」


今でもその時のことを鮮明に覚えています。


ご想像のとおり、日本の服務要綱には「You have to〜」と「  You must not〜」の文章だらけでした。特段それに違和感を覚えることもありませんでした。


言い換えれば、日本の組織の就業規則ですから「やらねばならないこと」と「やってはならないこと」が羅列されていたのです。

ここまでは、まぁそうだよなぁと。


それに対してアメリカのモノには「You can〜」しか載っていなかったのです。

You canの羅列でした!

You have to〜は見当たらなかったのです!

あまりの衝撃と同時に「なるほどなぁ〜」とうなったのを今でも覚えています。


つまり、日本の就業規則には厳守事項が、アメリカのそれには"権利"がびっしり書いてあったのです。


例えばですが、以下のような内容です。

  • 9:00〜17:00まで、オフィスのデスクを使うことができる。

  • 17:00には帰宅することができる。

  • 有給休暇を〇〇日取得することができる。

  • 職務上の機密情報に触れることができ、それを誇りを持って守ることができる。

  • 個人情報保護法に守られながら働くことができる。

  • 一日に1時間休憩を取ることができる。

  • etc


いかがですか?

つまり、職員を大人扱いしているのです。プロとしてのそれぞれの責任を尊重しているのです。


あれしなさい!これをしなさい!あれはやってはいけない!と言わねば分からないような人はここで働くに相応しくない。だから、ここで働くに相応しいプロは、それに見合った特別な権利が与えられる。ということなのです。


きっと、プロとして"当然"遵守しなければならないことをここに書くことは、職員を子供扱いする侮辱行為だということなのでしょう。

「初歩的なことは書かずとも、みなさんのようなレベルの人なら当然分かるに決まってますから!」との無言の敬意が示されているのです。


だから社会人として言うまでもないことを細かく書くことはしないのです。


そんな当たり前のことすら言われなければできない人は、翌日出勤するとロッカーがなくなっているのです。それに対して自他共に文句を言わない誇りを全員が持ち合わせているのです。


日米の様々な背景の違い

それと「就労する」ことの意味の違いもあると思っています。

その前提として、法律や文化の違いがあるのですが。


ここで、日米の就業規則の違いを語る上で押さえておきたい論点について触れておきます。


 ①日本の就業規則の特徴

  • やるべきことの多さ

  • 禁止事項の厳格さ


 ②アメリカの就業規則の特徴

  • フレキシビリティと自己責任の重視

  • できることの明確さ


 ③なぜ就業規則が異なるのか

  • 日本と米国の文化的背景(宗教、教育、歴史)の違い

  • 労働法の違いとその影響


 ④就業規則がビジネスに与える影響

  • 従業員への影響

  • 企業にとっての選択

  • 利点と欠点という視点で見た日米の就業規則の違い

  • 企業のニーズと現在のフェーズに合わせた選択


 ⑤その他

  • どちらのアプローチがより適切か?

  • 将来、この会社は何を実現したいのか?

  • 採用活動、入社、育成時の企業文化との一貫性



思いのある就業規則が様々な影響を及ぼす

社内外とのコミュニケーションの中で自社の文化を発信し続ける企業が増えています。

特に採用難が慢性化している業界ではいわゆる「情報発信」に力を入れています。同業他社との差別化を図ることを強化する狙いがあるのでしょう。


そんな中、就業規則の影響は社員の働き方を決定するだけにおさまりそうにありません。


そこで働く社員の姿勢は、社外へ"文化"として伝わり、それら一連の情報が自社ブランドとして確立されます。そしてそれが求職者や顧客、取引先の選別にも影響を与えていくからです。


2019年からスタートした「働き方改革」は、特に中小企業の経営者からは不平の声が聞こえますが、その前に就業規則の存在意義を以上のように捉えてみてはいかがでしょうか。


就業規則を改定することは自社で働くことの意義と特徴を明確に発信するまたとない機会になると思います。


みなさんは社員のやるべきことと権利のどちらにスポットを当てていますか?

社員の行動を厳格に管理しますか。あるいは、社員の優秀さに敬意を払い大人扱いすることで自主性を育みますか。


どちらかだけが正解ということではありません。

自分達の会社が何を実現したいのか?そのための手段としてどちらが自社に相応しいのか?


就業規則をそんな風に捉えてみてはいかがでしょうか。

今回は就業規則のお話でしたが、そこには意外と深い意図があったのです。



最後までお読み頂きありがとうございました。

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