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執筆者の写真ナカジマ

新人を褒めて育てるより大切なこと

人材育成、採用改善策は事業発展には最も大切な課題の一つです。経営資源について語る時「人、モノ、カネ」と言いますが、一番最初にくるのが「人」ですし。

そんな中、ここ山陰で採用担当者さんとお話しをしていると、頻繁に耳にする共通のキーワードがあることに気づきました。

それは、 「働きやすい環境」 「解りやすいマニュアル」 「自己肯定感を上げる」 「褒める」 「わかりやすい説明」 等です。 耳にしたことがあると思います。


結論から先に申し上げると、私は以上のような”形重視の環境”を企業側が整えようとする姿勢に疑問を持っています。よく議論することなく「そういう時代だから」とこのような環境を作為的に整えることにリソースを割いたとして、それは一体誰の利益につながるのか?と思うのです。 新入社員にとってはどんな恩恵があるのでしょうか? 企業側にとってはどんな利益があるのでしょうか? もちろん「自分は会社に歓迎されていない」と入社間もない頃、新入社員に感じさせてしまうのはプラスだとは言い難いので、職場に歓迎ムードを整えておくことは大切だとは思います。 このような環境を整えようとする企業側の意図のひとつに、入社早々小さな失敗をすることを恐れてストレスを感じるであろう新入社員への優しい配慮があるのだろうことは理解できます。

アメリカの興味深い実験結果

ここで、この問いのひとつの回答になり得る、ある実験結果をご紹介します。

世界屈指の名門であるスタンフォード大学の教授による実験です。


[以下、実験]

2つのグループにわけて数学の問題を解いてもらいました。

Aグループは、解ける度に毎回褒めることを繰り返しました。

Bグループは、解ける度に「もう少し頑張れたのでは?」と伝え続けました。


この工程を数週間続けた後で、2つのグループに難題を解いてもらいました。

さて、難題に直面した際、あきらめたのはどっちのグループ?

果敢に挑戦を続けたのはどっちのグループ?


(答え)

Aはすぐにあきらめました。

Bは最後まで粘り強く対応しました。


これはどういうことなのか?

Aグループは失敗することを「悪いこと」と捉えていたので、失敗するくらいならやらないほうがいい、という姿勢になったということです。

Bグループは失敗することを「自分の努力が足りなかったから」と捉えたので、努力を続けました。


さて、この実験の結果をどうとらえますか?

みなさんの会社ではAのような社員に育ってほしいですか?それともBですか?

聞くまでもないことですね。


褒めることより重要なこととは

実験のように極端に褒め続ける場面は実際の職場ではないとしても、褒めるかどうかはそこまで重要ではないと思っています。


それよりも、新入社員を迎える前提として「新入社員に将来どうなってもらいたいか?」「企業側から社員に何を求めるか?」というブレない方針を決めておくことが大切です。


そしてそれを社員側とも共有し、繰り返し確認するという地道な確認作業がなにより必要となります。一方的に押し付けるのではなく、理解を深めてもらう時間と工程が必要なのです。


その作業なくしては、新入社員は教育・研修の明確な目的を理解できないので、小さな判断すら主体的にできなくなります。 結果として、とりあえず言われたことだけやっていようと入社早々受け身の姿勢となります。これは、やる気満々で入社してきた社員であればそれだけやる気の出鼻をくじかれることとなり、希望をもって入社したはずの会社に早々からガッカリすることでしょう。

褒めるにしろ、厳しいフィードバックを伝えるにしろ、その目的と意図を相互で共有できてさえいれば、新入社員と言えど自ら主体的に状況を処理してもらうことができます。 そして、主体的に行動できている時には、それが少々大変だとしても充実感を覚えるので、精神的に追い詰められることは少ないと思います。


また、企業にとって、新入社員とは即実績を期待するというより、未来への投資という意味合いが強い場合が多いので、そのためにも、まずは会社の方針と戦略をできるだけ明確に理解してもらうことが大切となります。


ちなみに、新人さんにどうなってもらいたいかの方針の例として、次のような例があります。

・言われたことを正確にこなす社員

・自分で考えて動ける社員

・誰もが思いつかない変わったコトを生み出す社員

・チームの輪を常に優先する社員

etc


もっと平たく言えば、企業側の意向として、そろえたいのか、尖らせたいのか、論理的になってほしいのか、情熱をもってほしいのか、倫理を重視してほしいのか等でしょうか。


新入社員の育成方針でよく陥りがちな誤解

ここで最もやってはいけないのが決まった方針を伝えず「あれもこれも身につけてほしい」と会社にとって都合の良いこと全てを期待してしまうことです。


あれもこれもと全てを期待して”バランス重視”を新入社員へ要求すると、その結果「はい!」と言うのが得意なだけの特徴のない社員になる可能性が高まると思っています。


企業が方針を決断するとは、あれもこれも手に入れたいという状況の中から「やらないこと」を決めることに他なりません。なので、企業は方針を決めて課題の優先順位を伝え、新入社員と意識の共有を図ることが大切になります。


その上で全ての教育・研修プロセスを”その方針”に沿った形で実施すれば、方針と具体的な施策が繋がるので、従事する側も主体的に取り組みやすくなるでしょう。いちいち上司に確認すること無く自分の判断で動ける社員が育つ環境が整うことになります。


トップの仕事が現場の働きやすさのカギ

最後になりますが、多くの会社で共通していることとして、社内に「失敗は悪いこと。恥ずかしいこと。しないほうがいいこと。」というカルチャーが根強くあるように見受けられます。


そのカルチャーこそが新入社員が育たない、働かなくなる「諸悪の根源」である場合が多いと考えます。


なので、まずは社内で「失敗の定義」をアップデートしていくのがよいでしょう。


「失敗は『挑戦』の証であり、責めるより称賛に値する」とか。

「失敗の数こそ評価基準の肝である」とか。

「失敗には必ずすぐにセカンドチャンスを与える」とか。


この辺を上述した育成方針に繋がるような形で設計し、長期視点をもつことが必要がです。


カルチャーの軌道修正は鶴の一声で簡単にできることではありません。とても時間のかかる地道で大変な作業なので、だからこそ一刻も早く取り組みはじめることをオススメします。


これは先頭に立って旗を振るべき経営トップがやるべき仕事に他なりません。


自らが声をあげ、何より自らが率先垂範で見本を示す。

まさにトップだけがなせる仕事なのだと思っています。


この辺のご支援は私の得意分野なので、気になる方はお気軽にお声掛け下さい。


最後までお読みいただきありがとうございました。


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