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慢心マネジメント【ちょっと怖い話】

執筆者の写真: ナカジマナカジマ

暑い季節なので、ドキッとする怖い話をしようと思います。

情熱あふれるハードワーカーにとって、最も回避するのが難しいことの一つが今回のお話です。


経営者に限らずですが、人は駆け出しの時はスキルも実績も何もかも足りないので、意識しなくとも謙虚でいられるものです。

貪欲に学ぶし他人の話にも素直に耳を傾けます。


最初のうちは仕事がまだ少なく比較的暇なので、自分から積極的に周囲に声をかけることになります。声をかける側なので自然と礼をつくすわけです。


「ありがとうございます!」と言う回数も自ずと増え、謙虚で素直で勉強熱心な姿勢が共感を呼び、その結果として人も仕事も集まってくるのです。


そんな謙虚で積極的な姿勢を貫いて行動量をキープしていると、やがて幸運にも恵まれ仕事が増えていきます。徐々に人気者になっていきます。


すると、皆様のおかげだと感謝の気持ちを強く持ち、恩送りとばかりに今度は自分が周囲へ積極的に役に立とうと奮闘しはじめます。


その姿勢が共感を呼び、さらに評判が良くなり、嬉しいことなのですが現実的に予定がパンパンな状態に。結果として、今までできていたことができないほど忙しくなるのです。


嬉しいことだし、心のどこかで思い描いていた状態が手に入ったと達成感を覚え、充実した期間を迎えます。


この時期は、何かに真摯に没頭する期間で、事業活動で言うなら黎明期から成長期に起こる絵に書いたような好循環がこれです。





事業が上向きになる一方で

ここで転機に直面することになります。


次々と依頼が入る仕事に、とにかく真摯に応えることでこれまでの感謝に報いようと努力し続けます。しかし、以前のようにこちらから声を掛ける時間的な余裕はすでになくなっているのです。


当たり前のように予定が埋まるので、やりたいことが思うようにできなくなり、自分への苛立ちが増してきます。

本来であれば、お世話になった方々へもっと感謝を示さないといけないのにと。


忙しすぎて自分の信念を貫けないいらだちが続くと、重要な仕事の連続の中で、さらに無理やり予定を入れてこようとする人達にいら立ちの矛先が向きはじめます。


お問い合わせを頂くことはありがたい。必要とされることはありがたい。だけど、それは私が今やらなければいけない仕事なのか?

なんでもかんでも私に言われても困るのにと。そう思うようになります。


やがて、忙しすぎるので、自然な流れとして仕事を選ぶようになるのです。


ここが大きな分かれ道です。


予定がパツパツの状態のまま一定期間経つと、自分は仕事を選んで良い人だと無意識に思い始めます。


それを当たり前と捉えて疑わなくなり、自分の行いを肯定しようとするバイアスがかかります。周囲に必要とされている状態を痛感するからです。残念ながらこの状態に無自覚に陥ります。


というのも、毎日必死に頑張っている自分に対して、周囲への感謝が多少不足しているからといって、自らを責め続けることは多忙で勢いのある中ではできないものだからです。


本格的な勘違い状態への没落

この頃になると、「社会に貢献しよう!」という本来向かうべき方向から外れ始めていることに気づけなくなっています。ほとんどの場合でこうなります。


忙しい中でも必死に奮闘する姿に周囲も遠慮して、戒めるような強めなアドバイスを送るよりも、どうしてもいたわりと賞賛の言葉が多くなります。


周囲にいる利害関係がある人達は、それぞれの利己の立場から、自分の仕事を最優先でやってほしいので、気に障ることをアドバイスしようとは決してしてくれません。

そんな殊勝な人はビジネスの世界ではそうはいませんので。

自分の立場が危うくなるリスクに自ら身をさらしてまで、相手へ助言をしようとしてくれる人はビジネスの中ではいないと思っておきたいです。


フィードバックをもらえない環境

結果として、本人は自身の実情を第三者からフィードバックをもらう機会を失います。

謙虚に自分の実情を受け止める機会を失うこととなり、本来向かわねばならない方向からさらに離れていくのです。そして、残念ながらその外れた方向へ加速していきます。


その悪い状態のまま数年経つと、見るに見かねてその姿勢を戒めてくれる本当の仲間が現れます。古い仲間や親族などです。


しかし、悪い状態で長い時間を過ごしてしまうと、その頃にはすでに周囲からのいたわりの言葉と称賛の言葉しか耳に入って来ない状態に陥っているのです。


当然の結果として、せっかくの貴重な”本当の”アドバイスを「この人は今の私のことをわかっていないだけ」と切り捨てます。


こうして自分の実情に気付けない期間が続くことになります。

結果として日々の必死な営みが、思考のタコツボ化を加速させてしまうのです。





最終段階でおきること

その後、そのまま改善されずに時間が経つと、それまで寄ってきた人達も徐々に離れはじめます。


しかし、それでも自分を責めようとはせず、離れていく人達を責め続けます。「あの人達はわかっていないだけだ」と。


そして、その状況が進行し目に見えて業績が落ちてくると「自分はこれだけやっているのに!」と他責の姿勢を出しはじめるのです。


こうなると負の循環が加速します。


さらに、人は離れて行き、これまで支えてくれた仲間や側近への苛立ちが最高潮に達します。「私はこんなに頑張っているのに、あなた達の頑張りが足りないからだ!」と。


そして、さらに他責思考が加速します。

昔のように謙虚に学ぶ姿勢は残念ながら退化しています。本人は人気者だった昔の栄光の状態から何も変わっていないはずだと頑なになります。


ここまで来ると自分で気づくことはまず不可能です。


傲慢で面倒臭い人のために、不愉快な思いをしてまで親切にアドバイスをくれる人は現実にはいません。親戚や友人との関係もすでに崩れています。

すでに言っても言っても耳を貸さない人になってしまっているからです。


抜け出すことはできるのか

では、こうならないためには、どの段階で何が必要だったと思いますか?

この状態に陥ると、どんな手を尽くしても抜け出すことはできそうにありません。


つまり、結論としては、その前に未然に防ぐ以外に方法はないのです。


ここまで、この文章を読んで「自分は大丈夫だ!」と思った人。あるいは、自分はマズいかも?と直感しながらもすぐには言動を変えようとしない人。両者とも要注意です。


深刻な状態に陥っている可能性があると自らを疑うことをオススメします。


そして、もし幸運にも自覚することができたのなら、今すぐ親しい人に頭を下げて、何なら予算をかけてでも、自分を冷静に戒めてもらう機会を作ってみてください。


その期間を1年以上設けることをオススメします。

一言戒めてもらうだけでは思考のクセは治らないからです。


気を緩めると、すぐに元のラクな方向に戻ってしまいます。

矯正期間は思いのほか長期に渡ることになります。

傷が浅ければ半年間。できれば2〜3年間は継続してお付き合いしてくれる人を探してみてはいかがでしょうか。


夏ということもあり、寒気がするほど怖いお話をさせていただきました。


このブログを読むのは経営者の方が多いようです。

日頃から孤独に頑張る人にとって、何かのヒントになれば嬉しいです。



最後までお読み頂き誠にありがとうございました。

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