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企業が求めるシン・コミュニケーション能力

更新日:2023年2月19日


概論

僕が日経新聞を購読し始めたのは1999年。その当時から「採用したい人材像」を有名企業へ聞いたランキングでは「コミュニケーション能力が高い人」がずっとトップを占めていた記憶があります。


その記事を読むたびに、当時からモヤモヤしていたことがありました。

その疑問をまとめてみると下記のとおりです。


・コミュニケーション能力って一体何?

・なぜコミュニケーション能力が高い人材が求められるのか?

・コミュニケーション能力が高い人は他の人と何が違う?

・そもそも採用担当者はどんな人を欲していて、どんな人を避けたがる?

・それで一体誰が得をする?

・新入社員のコミュニケーション能力が高いと本当に会社は発展して儲かるようになるの?


今回はこれらの疑問をできる限り解像度を上げて僕なりに読み解いていきたいと思います。



1.時間軸で考える

時代が流れ社会がこれだけ変わっても欲しい人材像はずっと変わらない。このことは一体何を示しているのでしょうか。


時代の進化によってテクノロジーや流行りが変わっても、多くの日本企業にとって最大の課題は、昔も今も変わらず「人間関係」であることを示しているのかもしれません。


この辺はあまり進化していないようですね。


そうはいっても、人間関係の改善に関する課題感は時代の移り変わりに伴い少しずつ変化しているようです。

ここではまず、企業が解決したい課題を時間軸で見ていきます。


1-1 リーマンショック前後の時代

リーマンショック前後までの時代では、上司(人事部長)が「コミュニケーション能力が高い」と評価する人は、キビキビ会話ができてレスが早く、報連相がバッチリできる人でした。


時には場の空気を読み、チームや上司にとって心地よく忖度できる人が重宝がられた時代でした。「はい!」と言ってサッと動くようなイメージでしょうか。


昭和の時代から続く、いわゆる「体育会系」人材の多くがまさにこのタイプで、上下関係や礼儀等が身についていて、組織の中で文句言わずに動ける人の象徴のように言われていました。


その前提として、90年代まで続いた「日本企業は世界で一番強い」という諸先輩達の間で疑いのない神話があったのだと思います。四の五の言わずに会社の言うとおりに行動してくれれば企業は発展するとの過信があったのだと思います。


当時は年功序列型の終身雇用が当たり前だった時代で、雇う側としては社会の荒波の中で30年以上つぶれずに耐え抜いていけるかどうかが足元の課題感だった気がします。


1-2 日本がグローバルで連戦連敗となった今

ITバブル崩壊やリーマンショックから復活してくる時期になると、これまでの「経済大国日本」の事業モデルの常識がいよいよ疑われるようになりました。


それまでも封建的な日本型経営に対する批判は強いものがあったのですが、世界を制した過去の実績を盾に、諸先輩方の自己肯定理論を崩せない時間が続いていました。


その盾が破られる出来事が次々と起こり、更にスマホ登場によるメディア革命が追い打ちをかけ、ついに過去の失敗を潔く失敗として受け入れないともはや日本の経済はもたないとの風潮が経済メディアを中心に一気に広がりました。


こうした背景からにわかに流行り始めたのが、1-1で述べた能力は多少欠けていることを受け入れながら、それより忖度なしに課題を見つけて率直に改善案を口にできる人を求める風潮でした。


「〇〇したほうが良くないですか?」「これはいらなくないですか?」と自由に言ってくれる人を求める会社が増えてきたのです。多くの企業がやっと恥ずかしがらずに危機感を口にし始めたことによって起こった現象だと捉えています。


そうは言っても数多くの中小企業に関わってきた僕の経験から申し上げると、割合で言えば依然と前者の会社が多数派だという肌感です。


忖度せずに率直に意見を言う部下よりも、笑顔で黙って「はい!」と言う部下が好まれ出世するという根本構造は理屈で言うほど実態は変化していないと捉えています。


1-3 今後の方向性

現在は、社内コミュニケーションに関してはslack、SNS、動画メディア等テクノロジーの進歩によって以前の課題を補える部分が増えてきました。


これらのツールを使いこなしている会社はコミュニケーション量と質が上がり、その結果として事業の質そのものが上がってきていると感じています。


各組織はリーダーのビジョンと方針をより共有しやすくなり、課題意識の高い会社では社内ブランディングに力を注ぐ企業が増え、それにより経営の質が上がることで、結果としてそれらの会社に仕事と人材が自然に集まる市場構造ができつつあると実感します。


こういう会社は全体としてはまだ少数派ですが、市場の中で飛び抜けるような存在になっていると実感しています。極一部の会社だけが頭一つ飛び抜ける市場構造の一因はここにもあるのだろうと思っています。


1-4 シン・コミュニケーション能力とは

そこで、今後採用市場に求められる「コミュニケーション能力」は、まず第一に、新しい便利なツールを使いこなせる能力です。SNS、ZOOM、ブログ、動画編集能力等を含めたシン・コミュニケーション能力です。


第二に、ここで言う「コミュニケーション能力」の対象は社内のチーム向けのコミュニケーションはもとより、顧客とのコミュニケーションのほうに重きを置かれるように変わっていくのだろうと予測しています。


顧客(市場)とのコミュニケーションとは、単に顧客(市場)の要望に余すことなく応えることにとどまりません。ターゲットとなる消費者のニーズ(インサイト)を正解がわからない中で模索し追求し続ける能力のことです。しぶとく新たな問いを拾い続ける能力と言い換えても良いでしょう。


これは、長年マーケティングに取り組んでいる身としての個人的な願いも含まれますが。


今後は、顧客とのコミュニケーション能力・技術に長けている人のことを「コミュニケーション能力が高い人」と社会が評価する風潮に変わっていってほしいと願うのです。


その能力を追求する日々の営みの中で、表には現れない「顧客動向の兆し」に誰より早く気づき、仮説を誰より早く立てることができるようになれるからです。


一日でも早く「言葉に表れないコミュニケーション能力」を駆使して顧客(市場)と対話することができる人が評価され、社会に求められるようになってほしいと思います。


そのためには、まずは評価する側(リーダーや人事部長)がマーケティング感覚を身につける必要があるのですが、これは簡単ではないのかもしれません。



2.目的から考える


コミュニケーションと言えば、一般的には、相手に伝える能力と、相手の言葉の文脈を読んで理解する能力とを指す言葉であると定義されていると思います。


ただし、もしこのコミュニケーションの定義が、自分のことを理解してもらうための「伝える能力」や自分を理解してもらうために相手に求める「理解力」と定義しているとしたら、これはとんでもないことだと思います。


なぜなら、伝えることも理解してもらうことも、その主体が「自分」中心に考えられているので、誰もが自分を中心にコミュニケーション能力を語ってしまうことになるからです。


言うまでもなく、コミュニケーションとは対象となる相手や置かれている状況・文化、また切迫度(時間)等を無視して語られることに意味はなく、これらとセットで語られなければならないからです。


それにも関わらず、自分中心でコミュニケーションを語っているシーンを今なお多くの現場で散見していて、これには危機感を覚えます。



3.メディアの変化に伴う定義の変化


SNSや動画やブログでの顧客とのコミュニケーションが増えてくる中で、ビジネスシーンにおける「コミュニケーション能力」の定義も変わってきていると思っています。


話す、聞く、理解するにとどまらず、わかりやすくておもしろい文章を書く能力やカメラの前で素敵に演じきる能力も顧客コミュニケーションには必要となってきました。


コンテンツをターゲットに刺さるように魅力的に編集する能力も広義では顧客とのコミュニケーションには欠かせない能力だと思います。


対面の商談だとエース級の能力を発揮するのに、ZOOMではイマイチという人が周りにいないでしょうか?またその逆もいると思います。100人程度の会場での講演ではあんなにドッカンドッカン盛り上げるのが上手いのに〜と。


大勢の前に立っておもしろおかしくプレゼンする力には長けているのに、PCに向かって3000文字程度にまとめ上げる文章力は平凡な人もいるでしょう。またその逆もいるかもしれません。


これらの議論は、全てコミュニケーションの「手段」について語っているのですが。そして手段はテクノロジーの進化と共にこれからも変わっていくことでしょう。


きっと、アバターやロボットでのコミュニケーション等で急に頭角を表す人が出てきてもおかしくはないと思います。


現に今まででも著名なミュージシャンは言葉で語り合うのが苦手であるからこそ、その代わりである音楽で表現し続けているいう話を耳にしますので。



4.相手とコミュニケーションをとる目的から考える


色々なツールを使いこなして相手に伝えること。相手の言葉を理解すること。確かにそれらは大切ですが、ビジネスではそれだけでは競争に打ち勝って稼げるようにはなりません。それだけでは事業発展という文脈では何かが少し足りないはずです。


おそらく今までも必要とされてきて、且つ、今後も要求されるビジネスコミュニケーションスキルはこれに尽きるのでしょう。


それは、前述したとおり相手の言葉そのものを理解することにとどまるのではなく、相手の「ニーズ(またはインサイト)」を理解することです。正解はないので、理解するよう努めること。つまり、正解のないことをどこまでも模索し追求し続ける能力だと思います。


言葉をもれなく拾って正確に理解するのではなく「この言葉を発するということは、この人の真の課題は〇〇だ」と仮説を立て、それに答えようと自主的に行動をとることです。


まさに見えないもの、聞こえないものを感じ取る能力です。それこそ野生の勘に近いかもしれないですが(笑)


みなさんは、こういう経験をしたことはないでしょうか?


例えば、お付き合いをしている相手にプレゼントをしようとして、普段から何気なく何が好みで何に興味があり何に感動して涙するか等を会話を通じて確認していたとします。


その上で、考えに考えた上できっと彼女(彼)ならコレを贈れば喜んでくれるはずだ!とある時ふいにひらめいて、それを買って渡した時の反応で

「どうして私がコレをほしいと解ったの〜」と泣き崩れるという。


きっと当の本人ですら言葉にできていなかったモノだったりもするので、彼女(彼)自身もそれを手にしてはじめて「自分はコレが欲しかったんだ!」と気づく瞬間なのですが。


あるいは、上司と部下の会話でよくこういうシーンがあります。


上司が普段から「何でも相談して!」と言う声を受けて、ある時部下が困り果てた挙げ句上司に相談したら、一瞬で解決策を示してくれたというシーンでのこと。


上司は役に立てて良かったと達成感を覚える一方で、部下はなぜか不愉快だったりします。


部下が上司に求めたのは「解決」だったのか「ねぎらいの言葉」だったのか。あるいは「抽象的なヒント」だけが欲しくて意思決定は自分でしたかったのか。あるいは単に上司を困らせて気を引きたかっただけだったのかもしれません。


つまり、相談をした時のニーズが必ずしも「即解決してほしい」ではなかった可能性があるということなのです。


ニーズやインサイトは本人が自覚するのは難しい上、具体的なモノではなく、抽象的な課題や欲求であることが多いです。

なので、ニーズはあっても具体的にどんなモノが自分の課題を解決してくれるかまでは考え切れていないケースがほとんどなのです。


だから具体的なモノを手にとって目にした瞬間に、自分の思いを察してくれる人がいるという魔法にかかり、感動のあまり泣き崩れるのだと考えます。


相手が「欲しい」と意思表示したものを余すことなく理解してお届けするだけにとどまらず、相手が「ほしい」とすら頭に浮かんでいないニーズを模索し追求することで仮説をたてて先回りしてお届けする。


これが一歩進んだ顧客とのコミュニケーションなのだと思っています。


マーケティングにおいて「ニーズ(インサイト)」をつかむことを日頃から模索し追求し続けることにまで掘り下げて「コミュニケーション能力」の高い人材を求めている人事部長がいるとしたら、その会社の10年後は期待できるかもしれないです。


トップマーケターが人事部長に抜擢される企業(例えば㈱リクルートのような)会社が強い理由のひとつはここら辺りにもあるのかもしれないですね。



5.働く目的から見るコミュニケーション


そもそも「コミュニケーション能力が高い人材を求める」と回答するのは人事部長。そして、人事部に専任が3人以上人がいる会社はそれなりの規模の会社です。


言うまでもなく人事部長はサラリーマンですから、キレイごと抜きで言えば、業務の最優先事項は自身のプロモーションのはずです。大きな組織の中で、よりよいポジションでよりよい条件を手にすることが目的になるのは自然なことです。


その前提では、半年から1年程度の短期的な成果を上げることに関心が向くことが必然となります。5〜10年後の大きなゴールに照準を合わせコツコツ取り組むことにはなりにくく、認知しうる程度の手堅い成果を欲する傾向が強くなります。


だから、意思決定をする際には無意識にそのバイアスが入りがちになるのです。 では、具体的に人事部長が評価されるのに必要なこととは何でしょうか?


それは、各部署長や取締役から「良い人を採ってくれた」と評価されることに他ならないでしょう。


そして、評価する取締役も同じようにサラリーマン。自分のプロモーションに必要な人材を「良い人材」と同じように評価します。


この悪循環がコミュニケーション能力の高い人材を企業が長きに渡り求め続ける背景にあると思うのですが。


この悪循環の仕組みは根深く、本気で改善しようと思うのであれば、具体的な評価・昇進基準を根本から変える等のトップによる風土改革が必要となってくることでしょう。


6.最後に


ここまでの話を受け、企業が求める「コミュニケーション能力」の定義を4つのタイプに大まかに分類しました。


①組織の文化を理解した上で場の空気を読んで言葉を発したり、黙って「はい」と言ったりできる能力。また、チームや上司に対して忖度上手、社交的で元気な人が身につけている能力。


②相手が言っていることを文脈ごと正確に理解する能力と自分が伝えたいことを余すことなく簡潔に表現できる能力。


③上司への忖度やチームの空気を読むことなく、常に会社の業績アップの目的にコミットし、その目的において時に厳しいフィードバックを潔く言葉にできる能力


④仕事を常に「お客様第一」で考え、顧客のニーズを模索し言葉にならない欲求や課題を追求し続けることができる能力。そのため常に仮説(問い)を立て続ける能力。


求めるコミュニケーション能力に①〜④のレベルがあるとすると、これらのレベルはすなわち会社の未来の姿を映し出していると言えると思います。


最後に、確かに今は多くの会社ではコミュニケーション能力が高い求職者を求めていますが、これからは求職者側が会社のコミュニケーション能力レベルをSNS等のツールをとおして評価する時代が来るのではないかと密かに、そして確かに予想をしているのです。


島根の現場で日々奮闘しながらそんなことを思っています。


最後までお読み頂き誠にありがとうございました!


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