何十年とかけて一つの職を極めた人に出会うと新たな気づきをもらうことがあります。一つひとつの所作や習慣、ボソッと放った言葉から大きな気づきを頂いたりと。
その度に、まだまだ修行が足りないなぁと思うと同時に、気づきを頂き本当にありがたいと感じています。
技術を極めた人や長きに渡り実績を積み上げてきた人からいただく気づきは、もちろん技術的なものもあるのですが、気づきのほとんどがプロセスの大切さです。
それらは地道で長いプロセスを通じて彼らが極めた職に向き合う姿勢そのものです。
その向き合い方を目にする度に「美しい!」と感じ、時にそのしなやかさを目にすると揺るぎない「強さ」を覚えます。
手に入れたい!と想うプロセスに価値がある
きっと、彼らも若くて未熟だった頃は、プロになるのにふさわしい技術を身につけるため、あらゆる努力をしたのだろうと想像します。ただ勉強を繰り返すだけに飽き足らず、自分の生活習慣を見直したり、肉体改造を図ったりと少しでも理想の姿に近づけるようありとあらゆる努力をされたのだろうと思うのです。
そして、ひとたび突出した技術を手に入れてからは、そこに安住せずに今日までありたい自分を日夜追求し続けているのだろうと想像します。
例えるなら地位も名声も手にしてなお、引退まで手を抜くどころか毎年精進する質を磨きつづけ、自らを高め続けたイチロー選手のような姿勢でしょうか。
現役を引退して数年経つというのに、今なお「好きなアスリート」ランキングに毎年名前があがります。
また、例え彼のように世界の表舞台で日の目を見なくとも、別の道で彼以上に精進を続けてオンリーワンの境地に至った達人たちは意外と多いのではないかと思っています。
私達が知らないだけなのだと。
その上、私達が未熟すぎて彼ら彼女らの価値に気づく能力がないのも要因なのでしょうが。
彼ら彼女らの価値は技術だけではありません。実績や成果物でもありません。技術は価値のほんの一部です。
もちろんコピーしてたくさん複製できるようなモノではありません。
目には見えず測れないモノにこそ価値が宿る
そんな「目には見えない」価値に対する評価が、この国は欧州諸国に比べて低すぎるのではないかと感じています。
分かりやすくて測定できるものばかりが取り上げられ、目に見えないコトに価値を見出そうとしない傾向が強い気がしています。
残念ですが、そうした無形の価値を評価できる受け皿が成熟していないのが僕らが暮らすこの環境の現状なのかもしれません。
だからコピペの商品や、上辺だけのコピペサービスが流行るのでしょう。
少し寂しい気がします。
ビジネスにおいて、成功事例を真似ること自体は否定しませんが、それは最新の絆創膏を貼るのと同じ行為だと思っています。
禁止薬物にも名前が上がる特効薬を摂取することにも近いのかもしれません。
つまり、そこにある価値は作為的に作られたモノであり、一時的なモノにもかかわらず、あたかもそこに本当の価値があるかのようにつくろいます。
薬や道具によって、一時的に他人を装っているだけなのですが。
手っ取り早く身体が完治した気になる「便利な」特効薬が好まれます。
すぐに傷が治る最新の絆創膏でその場しのぎをしようとします。
もちろん、切迫した場面ではとても重宝するし、それにより助かる場面も確かにあります。
大切なのは、その薬や技術を使うことを「一時しのぎ」と自覚して、その後も覚えていられるかどうかなのだと思うのです。
なぜなら、大切なのは便利な特効薬を常備することではなく、怪我や病気をしないしなやかで健康な身体を作ることだからです。
たとえ怪我をしても、病気をしても騒がない。動じない。周囲が気づく前に直してしまう。
技術や特効薬よりも、そんな健康でしなやかな身体そのものに価値があると思うのです。
厳しい季節には本質がむき出しに
毎年、この時期になるとTVでもラジオでも「暑いですね〜」と聞こえてきます。
8月が暑いことは100年以上前から変わらないというのに。
「暑い暑い!」と口にして何かが好転することはないというのに。自然や環境に文句を言っても意味がないというのに。
確かに、最新の冷却機器や飲料水の開発には頭が下がります。進化への飽くなき情熱を感じます。
一方で、それらの道具を使う私達自身は、日頃から暮らしと向き合っているでしょうか。日頃から便利な道具に頼りすぎずに自分と向き合っているでしょうか。
「古い」「時代遅れ」と揶揄されがちな先代から続くしなやかな生き方と仕事に対する真摯な向き合い方。
夏真っ盛りなこの時期にこそ、そんな彼ら彼女らへ尊敬の念を込めて簡単には手に入らないプロセスの美しさを追求してみたくなります。
今年の夏も冷たいモノは控え、運動量は日頃よりむしろ増やす。できることなら体重を少し増量して8月を楽しみたいと思うのです。
みなさんは夏対策を春からコツコツ準備してきましたか?
昨年の夏の教訓を今年は活かして同じ轍を踏まずに暮らしていますか?
誰からも知られない、誰からも評価されない、自分だけが知る小さなプロセスの積み重ねの大切さを再認識する厳しい季節の到来ですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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